
外出して食事もしてきたので、
お風呂から上がって部屋着
(首周りがゆるんで色あせたパジャマ)でくつろいでいたら、
ピンポ~ンと玄関のチャイムが鳴った。
「は~い」
てっきり、
そろそろ届くはずの荷物が届いたのかと、ドアを開けたら、
きちんとスーツを着た3人の女性が、
(わたしたちは、けっして怪しいものではありません)
というオーラをたたえて立っていた。
11月も終わりの夜7時前、
日はとっくに落ちて、
真っ暗な古いアパートの通路は蛍光灯の光に照らされて、
気温以上に寒々と見える。
そこに、中年ふたりに20代の女性トリオが、
それぞれ誠実さを懸命にアピールした目を、
私に向けて立っているのだ。
40代。
才能もないのに、
男中心のビジネス社会で女一人生きてきた私。
人生の辛酸を否応なく垣間見てきた身で、
同性の懸命な話をむげにさえぎるのはむずかしかった。
結局、はなしの内容は(予想どおり)
彼女らの所属する宗教団体が、
いかに素晴らしいかということだった。
なんとか話を切り上げてもらい、
ドアを閉めたとき、
お風呂でこころよく温まった体はすっかり冷え切って、
見ていたテレビドラマは半分くらい終わっていた。
人の事情を顧慮しない女性トリオに、
それ以上に、
いま忙しいと、
きっぱり断らなかった自分に腹がたった。
ギョッとしたのは、
電気を消し、
布団に入って枕に頭を預けたときだった。
もしも・・・。
ドアを開けたとき立っていた夜の訪問者が、
あの、迷惑だが無害な女トリオじゃなく、
女の一人暮らしを狙った変態や犯罪者だったら・・・。
悲鳴を上げるひまもなく口をふさがれたら、
抵抗のしようもなく殺されることだってあるのは
ニュースでよく見聞きする。
いったんドアを開けちゃったら、
危険は防げない・・・。
これからは、
ドアは、やたらに開けないようにしようと、
こころに決めて目を閉じた。
ともこ・40代・埼玉県
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