
家族は両親と姉、兄、私の5人。
私は末っ子だった。
姉と兄は私とは年が離れていた。
そういうと、ほとんどの人は、
「じゃあ、すごくかわいがられただろう」というが、
そんなことはなかった。
もの心ついたころから、姉にも兄にもつらく当たられる毎日だった。
姉はいきなりヒステリーを起こし罵詈雑言を浴びせ、
兄は理不尽に暴力をふるった。
私はそのつど父に、
「ボクはなにもしていないのに」と訴えたが、
父は姉、兄を怒るでもなく、
ただ私をだっこしてくれただけだった。
しかし、子どものころの私は、
それだけで悲しい気もちは晴れ、
姉や兄を恨んだり、嫌いになる気もちは消えた。
思いかえすと、
父は、姉と兄を疎んじていたようだ。
理由は知らない。
私が生まれる前に何かがあったのかもしれないが、知りたいとは思わない。
私は父の晩年に生まれた子で、父にはたいそう可愛がられた。
そのことが姉と兄にはたまらなく気に入らないことの一つだったのだと思う。
父は私が19歳になる直前に亡くなった。
私が長じてからは、
さすがに姉や兄の暴言も暴力もなくなったが、
家族としての交流は、まもなく絶えた。
いま、父の残した事業や遺産をめぐり、
遺産相続の配分でおりあいがつかず、
まさに骨肉の争いのさなかである。
父という防波堤のないいま、
遺産相続の泥仕合で、
兄姉に対する私の思いは、他人に対するそれ以上に
暗く冷え切っている。
一人・千葉